COLUMN

2022.02.21

肌にも環境にもやさしい日焼け止めとは?

日焼け止めイメージ画像
紫外線から肌を守るときに活躍する日焼け止め。しかし、選び方を間違えると肌に負担をかけてしまうことも。最近では、含まれる成分によって環境に害を与えることが指摘されるケースもあります。
今回は、肌と環境にやさしい日焼け止めの選び方と注意点について詳しく解説します。

【コラム執筆】

成田亜希子医師
東京都出身、弘前大学医学部卒。青森県弘前市在住の医師。
国立医療科学院や結核研究所で研修を積み、保健所勤務経験から感染症、医療行政に詳しい。
日本内科学会、日本公衆衛生学会、日本感染症学会、日本結核病学会、日本健康教育学会所属。

コラム以外の商品などの掲載箇所については執筆しておりません

紫外線が肌に与える影響とは? *1 *2 *3

太陽は波長の異なる光線を放出しており、その中の1つに紫外線が存在します。
紫外線の中でも波長の長い順にUV-A・UV-B・UV-Cの3つ分かれており、地上に届くのはUV-AとUV-Bの2つです。

UV-A、UV-Bの影響イメージ

UV-A

地上の紫外線の約9割を占め真皮中層にまで到達するとされており、ガラス越しでも紫外線が届くため日常生活でも知らず知らずのうちに浴びています。

UV-B

表皮までしか到達しないが直接的に表皮の細胞にダメージを与え、いわゆる日焼けと言われる赤く炎症させたり肌の黒化を起こします。

紫外線は肌に悪いものというイメージが強いかもしれませんが、私たちの身体に必要なものでもあります。まずは、紫外線が肌に与える影響について詳しく見てみましょう。

紫外線のメリット

紫外線には、ビタミンDの合成を促す働きがあります。
私たちの肌にUV-Bが当たると、肌に存在する7-デヒドロコレステロールからビタミンDが作られるようになります。ビタミンD は食事から摂ることもできますが、不足しがちな栄養素の一つでもあります。紫外線を浴びることで食事では不足しがちなビタミンDを作り出すことができるのです。
ビタミンDはカルシウムとともに骨を作るための大切な栄養素であり、極端に紫外線を浴びずに過ごすと骨が弱くなる病気を引き起こす可能性があります。

紫外線のデメリット

紫外線は、日焼けによる肌の炎症を引き起こします。また、炎症によってメラニン色素を作る細胞が刺激されることで色素沈着を引き起こし、シミの原因になることも。
さらに、UV-Bは細胞の中にあるDNAにダメージを与え、UV-Aは活性酸素を作り出します。その結果、肌の弾力をキープするコラーゲンが破壊されてしわやたるみができやすくなり、将来的に皮膚がんを発症するリスクも高くなることが分かっています。

紫外線吸収剤と散乱剤の違いとは?

紫外線のデメリットから肌を守ってくれる日焼け止めにはさまざまな成分が含まれています。紫外線による肌へのダメージを防ぐ成分としては、「紫外線吸収剤」と「紫外線散乱剤」が挙げられますが、それぞれどのような働きがあるのでしょうか?

紫外線吸収剤とは?

紫外線吸収剤とは、その名の通り紫外線を吸収する成分です。肌の表面で紫外線を吸収して化学反応を起こし、熱などのエネルギーに変える働きがあります。熱エネルギーに変えられた紫外線は肌に透過することなく、肌の表面から放出されますので肌への透過を防ぐことができるのです。しかし、紫外線をブロックする効果は高いものの、刺激が強く湿疹やアレルギーを引き起こす場合があります。

紫外線散乱剤とは?

紫外線散乱剤は細かいパウダーの形状をしており、肌の表面を覆うことで紫外線を散乱させて肌への浸透を抑える働きがあります。紫外線を抑える効果は紫外線吸収剤より劣るものの、天然成分由来の酸化チタンや酸化亜鉛などが主成分で肌にやさしいのが特徴です。

紫外線吸収剤がサンゴ礁に与える影響とは?*4

海底イメージ画像
紫外線吸収剤は「日焼け止め」効果は高いですが、肌への刺激が強いもの。しかも、刺激になるのは私たちの肌だけではないことがわかっていきました。
紫外線吸収剤には、オキシベンゾンやオクチノキサートなど自然界にとって有害な成分が含まれています。2008年には、世界中の観光地で生じているサンゴの死滅は海に溶けだした紫外線吸収剤の影響であるとの見解が発表され、2015年にはオキシベンゾンやオクチノキサートがサンゴのDNAを傷つけるとの研究結果が示されました。
このような流れの中、2018年にはハワイ州でオキシベンゾンなどの成分が含まれる日焼け止めの販売を禁止する法律ができ、現在ではパラオ、フロリダのキーウエスト、ボネール島、メキシコの自然保護区域などでも同様に使用が禁止されています。

サステナブルな日焼け止めの選び方とは?

日焼け止めは外出時に欠かせないアイテムの一つです。しかし、成分によっては肌にダメージを与え、環境破壊の一因となることも指摘されています。現在では、サンゴ礁に影響のある紫外線吸収剤を含む日焼け止めの販売が禁止されている国や地域も少なくありません。
日焼け止めを選ぶときは、ご自身の肌だけでなく環境のことも考えた商品を選ぶとよいでしょう。
さらに、界面活性剤が含まれていないものもおすすめです。界面活性剤は長時間肌に塗った状態にすると肌のバリア機能を損なわせてしまうことがあります。バリア機能が低下した肌は紫外線の刺激も受けやすくなりますので、注意が必要です。
また、最近では肌にやさしい美容成分がたくさん含まれた日焼け止めも販売されており、日焼け止め効果と一緒に肌のお悩みも改善する効果が期待できます。ご自身のお悩みに合ったものを試してみましょう。

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